夫と妻の心理について

変換 ~ 001
親と子という人間関係に、まさるともおとらぬほど特殊な性格をもつのが、夫と妻という人間関係です。
親子を軸とする家族のなかでも、夫婦の人間関係は、いささか特殊であるとさえいえます。
夫婦は、それぞれが属する二つの家族社会をつなぐきずなであると同時に、それぞれ相手の家抜とは血のつながりをもたぬ、いわば他人でもあるわけです。
そのうえ、結婚によって新しく形成される家族のなかにあっても、唯一の他人どうしの人間関係であることをやめません。
こうした家族のなかでの夫婦という人間関係のもつ特殊性は、他の家族員が「閉じられた社会」を構成していて、生まれてから死ぬまで家族であることがやめられないのに反して、夫婦だけは離婚によって家族的人間関係を解消することができる麺という点においてその極に達します。
家族社会のなかで、このような特殊な性格をもつ夫婦関係が、もともと他人どうしが結ばれたものであることからきているのだ、ということはわかるのですが、夫婦はまた、他人どうしであるということによって、血のつながりのある家族のあいだには生じえないような、特殊の心理によって結びついてもいます。
そして、これらの特殊な人間関係が、夫と妻の心理を、ひいては結婚を、ひじょうに複雑で微妙なものとしていることがわかります。
夫にとっては妻、妻にとっては夫とよばれる相手は、たんに妻であり夫であるという配偶者であるだけでなく、自分の親にとってのヨメ・ムコ、自分の家族にとっての同じ家族ないし親族、そして二人のあいだに生まれたこどもの、終生かわることのない母・父でもあります。
その結果として、夫は妻を、ただ夫としての目でみるだけでなく、自分の親、家族、こどもの目で、ヨメ、家族、親族、母としてみるという、心理のはたらきが生じます。
妻が夫をみるときにも、同じ心理のはたらきが生ずることは、いうまでもありません。このような夫と妻の心理は、他の家族に対するぱあいとは異なった強さで、相手に対して作用することがあるでしょう。あるぱあいにはよりきびしく、!あるぱあいにはよりやさしくというふうに。
夫も妻も、個人であるまえに家族人である、ということが十分すぎるほどわかったいま、夫と妻のこうした心理は、当然のこととして了解されたにちがいありません。
また、現代の結婚における夫と妻の関係が、こうした心理と密接に結びついていることを知らなければ、結婚に成功する可能性もほとんど失われてしまうことでしょう。
なぜなら、結婚に成功するためのもっともたいせつな条件は、夫と妻がお互いに理解しあうことであり、お互いの心理を知らずに理解しあうことは、だれの目からみても不可能であることは明らかだからです。
素敵なパートナーにで、出会っても幸せに付き合うには努力が必要です。
以上、夫と妻のいずれにもある心理、そこから生ずる夫婦関係のみについて述べ、夫と妻に特殊的にみられる心理について述べなかったのは、ふつういわれる夫や妻の心理、夫婦関係が、ほとんど男と女、男女関係に関する心理にすぎず、結婚だけにみられる家族人としての夫や妻、家族的人間関係のなかでの夫婦関係ではなく、男女の心理について述べるのは本書の目的外にあると考えたからにほかなりません。
むしろ、心理的な男女差を強調することは、現代の結婚の正しい理解をさまたげるものであると考え、それについて述べるのを意識的にさけた、といったほうがあたっているくらいなのです。

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